私の上司
冬のとある日、上司である係長が、ずっこけた。
それは、もう見事にずっこけた。
その、ずっこけぶりはある意味では芸術の域に達しているものとお見受けした。
あの瞬間を見た時、私の時間が停止したのだ。「ああ、時間停止モノってあるんだな」と、私は思慮深く頷いた。
なにも、そこまで綺麗に転ばなくてもいいだろうに…
どんな人生を歩めば、あそこまでクール&ビューティーに転ぶことができるんだろうか?
転びっぱなしの人生だったのかもしれない、そうでなければあんな転び方はできやしないだろう。もう少し、やさしく接したほうがいいのかもしれないと私は思った。
その後、上司である係長は、少し照れくさそうにしながら事務所へと戻っていった。
なぜか最後に、ペロッと舌を出す所がチャーミングだなぁと思った。
『クール&ビューティー&チャーミング=係長』という方程式が出来上がった瞬間である。試される大地で、試され続けた人間なのだろうと思った。
私は、何もしてないのに何か悪いことをしたような気がしてしまった。そうだ、手を差し伸べるか、声を掛けてあげるべきだったのだ!
私は自分の至らなさに、思慮の浅さに1ミリほど歯がゆかった。
ふと気になり、上司がいる事務所(休憩室)を覗いて見た。
そこには、お菓子を一心不乱に食べる上司がいた。
しかし、それはいつもの見慣れた光景であった。
(そう…上司は、お菓子が大好きなのだ・・・!!)
終わり